2024年8月25日日曜日

【検証その3】311で東日本壊滅寸前まで行ったのに、人々はなぜ福島原発事故をリアルに受け止められないのか(24.8.25)

今日の人々は、そもそもリアリティを喪失した人工社会に生きているから。
言い換えれば、バーチャルな世界の住民になってしまったから。

バーチャルな世界とは単に、外界には存在しない、ヒトの意識の中だけに存在する世界に限らない。自然には存在しない、ヒトの意識の中だけに存在するモノ、これを外界に作り出したときも、そのようなモノで構成された世界もまた、「自然には存在しなかったヒトの意識の中だけに存在する世界」という意味で、バーチャルな世界である。
つまり、外界に存在するに至ったものなら何でもリアリティがあると思うのはまちがいだ。もともと自然に存在しないモノを自然界に作り出したとしても、それは、依然、自然に存在しない、自然界とは断絶したモノである。

今日の社会は、安全安心をうたい、心地よさをうたい、お金さえあれば欲しいものが何でも手にはいる人工社会・情報化社会。
今日の社会は、自然の世界を、ヒトの脳の中で構成した設計図に従って世界を、安全安心、予測と制御可能なように人工的に作り変えたもの。
言い換えれば、その人工世界は「脳の中に住んでいる」のと変わらない。なぜなら、脳の中で予測と制御可能なように設計した図面に従って外界の世界を再構成したものだから。

そのような人工世界の極地、それが核兵器と原発。
原発もまた、ヒトの脳の中で予測と制御可能なように設計した図面に従って、放射能による発電の装置を再構成したもの。それはあくまでもヒトの脳の中で、予測と制御可能なはずだと信ずるところに従って設計したものでしかなく、その設計が自然界の「放射能による発電」のカラクリと一致する保障はどこにもない。現に、チェルノブイリでも311でも、原発(自然界のカラクリ)はヒトが設計した予測と制御に対応せず、ヒトの予測と制御を裏切って暴走した。

 この意味で、ヒトの脳の中で作られた予測と制御で設計された人工世界は、自然界のカラクリからみれば、大なり小なりリアリティに欠けていて、大なり小なりバーチャルならざるを得ない。

生まれてからこのかた、そのようなバーチャルな世界に住み続け、安全安心で、予測と制御可能なバーチャルな人工世界が日常的な世界になっている人たち(典型的には都市住民)には、自然の世界のほうがむしろ非日常的で、違和感を覚える異常な世界のように思えてくる。例えば自然界の実在であるコロナウイルスを、非日常的な異常な存在のように忌み嫌い、排除したくなる。

それと同様に、原発事故により大気中に大量拡散された放射性物質による放射能の暴走、これがもたらす未曾有の惨劇(まさに自然界の実在である)について、これと正面から向き合うのではなく、安全安心で、予測と制御可能な脳化社会に対する「異物」として、非日常的な異常な存在として徹底して忌み嫌い、排除したくなる。
だから、たとえ311で東日本壊滅寸前まで行ったことを知っても、そこから原発事故の惨劇に向き合い、受け止めるのではなく、これを非日常的な異常な存在として忌み嫌い、排除しようとする。
これが、 311で東日本壊滅寸前まで行ったのに、人々がなおも福島原発事故をリアルに受け止められない根本的な背景ではないか。

そうだとすると、人々が福島原発事故をリアルに受け止めるのは殆ど不可能なことのように思えてくる。
しかし、即断するのは早い。そこから一歩前に出ると、全く違った展開が、次の展開が可能となるのではないか。

実はそこで、今日、バーチャルの世界の住民になってしまった人々の生き方、暮し方そのものが根底から問われている。なぜなら、東日本壊滅寸前まで行った原発事故とは、脳化社会を推し進めて行った先についに行き着いた、バーチャルな世界の総決算ともいうべき出来事なのだから。
この意味で、もし人々が東日本壊滅寸前まで行った福島原発事故(※)の惨劇と向き合おうとしたら、その人は、これまでやってきた脳化社会で安住してきた生き方そのものを根底から問い直すことが迫られることになる。
これは脳化社会にとって最大の試練であると同時に、その人にとっても、おそらく人生最大の転機なのだと思う。

(※)2号機の危機は東日本壊滅のおそれ(福一吉田所長の証言)

私は本当にここだけは一番思い出したくないところです。・・・ここで本当に死んだと思ったんです。2号機はこのまま水が入らないでメルトして、完全に格納容器の圧力をぶち破って燃料が全部出ていってしまい、そうすると、その分の放射能が全部外にまき散らされる。 最悪の事故ですから。チェルノブイリ級ではなくて、チャイナシンドロームではないですけれども、ああいう状況になってしまう。・・・放射性物質が全部出て、まき散らしてしまうわけですから、我々のイメ-ジは東日本壊滅ですよ2011年8月9日吉田調書52頁)。

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