【検証6】に書いたコメントの表題
1、解釈変更による法改正の無効化
つまり(環境基本法の)解釈変更による(2012年6月の環境基本)法改正の無効化
この意味について、以下に追記します。
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環境基本法の2012年6月改正のあと、政府は途方にくれ、その挙句、次のアクロバット的な新解釈に出ることを決断した。それが、 【検証6】で指摘した、
環境基本法に定める「環境基準」&「規制基準」とは、事業者の「通常の事業活動に伴って発生する」公害原因物質に関する基準であって、福島原発事故のような「事故に伴って発生する」公害原因物質は含まない。つまり、戦争を侵略戦争と自衛戦争に区分した憲法9条の政府解釈と同様、「公害原因物質の発生」を「通常の事業活動に伴って発生する」場合と、「事故などそれ以外の場合で発生する」場合とに区分し、環境基本法で定める「環境基準」&「規制基準」が適用されるのは前者だけだと。
これで、福島原発事故によって発生した放射性物質を環境基本法に定める「環境基準」&「規制基準」が適用されるという問題はめでたく回避できた。
だが、問題はそれだけでは済まなかった。上記のアクロバット解釈によっても、放射性物質が「通常の事業活動に伴って発生する」場合にはなお環境基本法に定める「環境基準」&「規制基準」が適用されるという問題が残ったから。
この問題をどう解決するか。ここでも政府はおそらく散々思案した末、またしてもすっとぼける次のアクロバット解釈に出ることを決断した。
結論は、この場合も「放射性物質について環境基準を設定する必要性はない」。
その理由は「放射性物質については、炉規法、障防法等の規制法令により、施設周辺の住民の中で最も高い線量を受けると想定される者であっても被ばく線量が線量限度を超えないことを確保するとするICRP勧告の考え方に則った平常時の発生源管理が行われている」から。
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この禅問答のような意味不明な文言にこそ彼らの苦悩が浮き彫りにされている。なぜなら、ここで言っているのは、ぶっちゃけ言えば、事業者が平常通り、ちゃんと管理しているから、わざわざ基準を定める必要なんかない、ということだから。
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これは法の自己否定そのものの表明です。それが通用するんなら、人は平常、人殺しなんかしないでちゃんと生活を営んでいるから、わざわざ殺人罪なんていう規範を定める必要なんかない、人は平常、強盗なんかしないでちゃんと生活を営んでいるから、わざわざ強盗罪なんていう規範を定める必要なんかないことになる。
しかし、現実の法規範は殺人罪も強盗罪もちゃんと明記している。そもそも人が平常、まずやりそうもない内乱ですら、万が一のことをおもんばかって、内乱罪の規定すら明記している。
そもそも、放射性物質以外の公害有害物質について、事業者が平常通り、ちゃんと管理しているから「環境基準」&「規制基準」を定めないでいいなんてゆうちょな態度をとっていない。それで済むなら、1960年代の深刻な公害ニッポンにはならなかった。それに対する猛省を経て、事業者が平常通り、ちゃんと管理しているという前提で、なおかつ事業者に守らせる「環境基準」&「規制基準」を定めた。
だったら、なんで放射性物質に限り、そのような法の大原則に対する例外扱いするのか。その合理的な説明がどこにも何もない。
ともあれ、その結果、政府は、環境基本法の次の素晴らしい新解釈に基づき、放射性物質を環境基本法の対象とする2012年6月改正はなかったことにまんまと成功した。
1、「公害原因物質の発生」を「通常の事業活動に伴って発生する」場合と、「事故などそれ以外の場合で発生する」場合とに区分し、環境基本法で定める「環境基準」&「規制基準」が適用されるのは前者だけだ。
2、その結果、後者の、
福島原発事故によって発生した放射性物質を環境基本法に定める「環境基準」&「規制基準」が適用されない。
3、他方、前者の、
放射性物質が「通常の事業活動に伴って発生する」場合にも、従来の規制法令(炉規法、障防法等)によって、ICRP勧告の考え方に則った平常時の発生源管理が行われている」から、それ以上、「環境基準」&「規制基準」を定める必要はない、と。
以上の、環境基本法の新解釈によって、放射性物質に対する市民の安全確保は、311前の放射能安全神話に眠っていた(2012年6月改正以前の)環境基本法によってふたたび運用されることとなった。
これが表題の
311後の政府の作戦は「環境基本法の解釈変更により2012年6月改正はなかったことにすること」だった
の意味です。
これは、福島原発事故でゴミ屋敷であることが判明した311前の法体系に戻ることを表明した、前面開き直りの、かつセルフネグレクト(自己放棄)の態度です。311後の日本社会がゴミ屋敷になったことをまざまざと実感した瞬間でした。
そして、目の前に座った、まだ子育て世代である政府の役人に向かって、思わず、「あんた、ホント、このゴミ屋敷のままでいいと思ってるの?」と問いかけたい衝動に駆られました。
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